原木調査in志賀野地区公民館
公開日:
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地域デザイン授業記録簿, 葡萄櫨の原木調査
2018年6月6日18:30
志賀野地区公民館で、初めて地域住民の方を対象とした「葡萄櫨の原木調査報告会」を行いました。
調査を担当する生徒が、スライドを使い発表しました。
会場には40名近い方が集まってくださり、真剣に聞き入ってくださいました。
生徒の発表の後に、生徒からの依頼で昨年年輪の調査を実施した和歌山県による結果報告も行っていただきました。
授業の文献調査で推定した樹齢は「170年以上」(+20年くらいは誤差として可能性あり)とのことでしたが、
県の調査で訪れた専門家の先生からは「樹齢に対して樹皮が若く見える」とのご指摘もありました。
今回発表いただいた県の結果は、「年輪の幅が約0.5mmで、採取できた5㎝で最大97年分の年輪があった」
とのことでした。
上記の結果は天然記念物として登録された84年前に計測されたサイズと比べても矛盾はありません。
県としては「高校生の調べた結果と矛盾する内容は無い」ということでした。
今後は、地権者の方や地域の方々と協議しながら、長く保護できる方法を模索していきたいと思っています。
■葡萄櫨とこれまでの調査活動
葡萄櫨(ブドウハゼ)は、紀美野町原産の徳用林産物のひとつで、冬には黄金色の実を実らせます。一般の果樹のほとんどが接木(クローン)であるように、この葡萄櫨も最初に紀美野町で見つかった1本以外は、全てクローンです。
昨年度のりら創造芸術高校の授業「地域デザイン」で行ったフィールドワーク調査と文献の調査を通して、この葡萄櫨の最初の1本、すなわち「原木」を発見しました。
発見といっても昭和30年頃までは、その貴重さから県指定の天然記念物として保護されていた木です。
現在調査中ですが、様々な理由からその存在が忘れられ、昭和60年に発行された町誌でも「現在は枯死してその跡形もない」と記されています。
その実から抽出されるロウは英名を「JAPAN WAX」といい、和ロウソクの原材料になります。
櫨のロウソクは、テレビ番組「ザ!鉄腕!DASH!!」のダッシュ島で取り上げられたことでも話題になりました。
昔は全国的に需要が盛んで、明治頃までは和歌山県の財政を支えたと云われています。
その後、照明の電気化によってその需要が急速に減少し、現在では紀美野町で主に収穫するのは88歳のおじいさんのみになっています。
しかし、京都の和ロウソク職人の方などは、「和ロウソクの原材料としてこのロウが最高の品質だ」と評していて、京都で生産し産地化したいという活動も始まっており、今も着実に需要があります。
京都の舞妓さんなどがその肌を真っ白に塗るのは、この和ロウソクの影響があったともいわれます。
私たちが現在良く目にする洋ロウソクに比べ、和ロウソクは燃焼温度が低く、オレンジに近い色で燃えます。
この光の下で綺麗な肌色に見せるために、あのような真っ白な化粧が合理的であったことも想像できます。
和ロウソクの職人さんからお聞きした話によると「海外のTVメディアの方はそのことを良く知っていて、LEDの照明ではなくホンモノの光(和ロウソクの照明)で舞妓さんを撮影したい」といわれるそうです。
文化というと、京都の舞妓さんや歌舞伎など、華やかなものを想像しますが、文化を意味する英語「culture」は「耕す」を意味するラテン語「colere」に由来します。耕して伸びるのは「根っこ」です。
文化が華やかな花だとすると、その下には風土に根ざした「根っこ」がある。ということでしょうか。
照明文化協会の落合会長が先日りら創造芸術高校に視察に来てくださり「日本の誇る伝統的な照明といえば和ロウソクです。和ロウソクの最高品種を生んだこの地(紀美野町)は日本の明かり文化の原点といえますね」と語ってくださいました。
「櫨の実」はまさしく照明文化の根っこであるといえそうです。
街を歩くと海外の旅行者が増えたのはどの地域でも感じることが出来るようになりました。
観光立国を目指す日本において、和ロウソクのような文化の根は、決して派手ではありませんが、今後とても重要なものになると思います。
りら創造芸術高等学校では授業でその保護や調査、ドキュメンタリー映画の撮影など、芸術を特色とする高校ならではの視点で活動しています。
りら創造芸術高等学校HP
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