「葡萄櫨の原木」写真鑑定
公開日:
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地域デザイン授業記録簿, 葡萄櫨の原木調査
授業でブドウハゼの原木と思われる樹と、
天然記念物報告書に掲載されている写真が同一の場所で撮られたものであるかどうかを調査しました。
以下、授業で作成したレポートを参考にブログ記事にしました。
□調査背景
りら創造芸術高等学校で調査を継続している元天然記念物「葡萄櫨の原木」と思われる樹は、江戸末期から明治にかけて和歌山県の財政を支えたと言われ、全国で栽培されているハゼの優良品種「葡萄櫨」の最初の一本、すなわち原木であるとされ、県の天然記念物として大切に保護されていた。
しかし、町誌に「原木は現在枯死してその後方もない」と記載されており現在は存在しないはずの樹であるが、
地域の古老から「この樹が原木だ」との証言が得られている。
また、調査によってこの樹は、和歌山県文化財調査報告書(5)(昭和9年発行※以下報告書と略)「葡萄櫨の原木」の項に記載されている住所の場所にあり、そこに掲載されている写真と形状が酷似。報告書に掲載されているサイズも矛盾のない範囲で一致している。
また、報告書から推測できる樹齢も和歌山県による年輪調査の結果とほぼ無理のない範囲で一致している。
さらに、昨年度本校からの協力要請で和歌山県立向陽高校の生徒らがDNA鑑定した結果、この樹は「葡萄櫨」である。ということが判明している。
報告書によると170年を超える樹齢の葡萄櫨は原木しかありえないことになるため、りら創造芸術高等学校の授業地域デザインでは「この樹は葡萄櫨の原木である」と考え、保護と天然記念物への再設定を提案している。
しかし、報告書にある写真と樹形は酷似しているものの、背景に映る山の稜線は竹によって遮られているため、比較することができていない。
□調査方法
地権者の許可のもと、町教育委員会に協力いただき周辺に生えている竹の除去を行い、携帯電話の重ね撮りアプリケーションを使用し、おおよその位置を特定した。
その後、撮影した2つの写真を比較した。
↓以下の写真の左が報告書の写真。右が本調査で撮影した写真である。
□分かったこと
①原木の写真で確認できる山の稜線(緑色の点線)と
竹を除去して確認できた現在の写真の山の稜線(黄色の点線)の角度やサイズを合わせたところ、
双方の樹の根本の位置が一致した。(青実線)
②①で得られた写真で比較したところ現在の写真では、葡萄櫨の樹は12.61°傾斜している。
③2股に分岐している角度が22.11°で双方の写真で一致した。
◻︎まとめ
①により、山の稜線から見る原木の位置関係に矛盾がないことが示唆されており、③により2つの樹が同一である可能性が高いことが分かった。
また、②から樹が 倒れてきていることも分かった。
りら創造芸術高等学校HP
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